薬草への想い

薬草への想い

幼少の頃から、科学実験と美味しいものが大好きだった私が、薬剤師となり、一方趣味で、バター、卵、砂糖、小麦粉という共通材料を化学・物理変化の力で様々なお菓子に変身させてしまう「製菓」に興味を持ったのは自然な流れで、更に、その本場であるフランスの美意識や快楽主義的センスが宿る生活芸術を覗いてみたいと言う想いが高まり、パリまで来てしまいました。

以来、出逢ったのはルイ16世のお抱え薬剤師が開設したというショコラティエや紅茶専門店で紹介された、身体によい薬草茶とフランス菓子との美しいマリアージュ、そして、そこから派生して、由緒ある薬草薬局(HERBORISTERIE)エルボリストリーに並ぶ芳しい薬用ハーブの数々でした。

薬草への想い

私の興味はすっかりその周辺に集中し、ハーブの歴史から、自分が薬局で取り扱ってきた近代医薬までの流れを学ぶことになり、薬漬け、化学物質漬けの生活の中で免疫を落とす悪循環に取り込まれてしまっている、日本のおくすり事情を俯瞰しました。

人間は、感情や創造性、そして、本能や直感という化学や医学で説明しきれない「生命力」を持った有機物であり、生化学的に人体を機械とみなし、単独の有効成分を人工合成した無機物である近代医薬と同化できるはずはありません。「症状」は生命力のアンバランスによるもので、それを整える作用をもった薬用ハーブの使用法を知って、小さな不調や不快感を解消してゆくことは、ひいては身体全体の活力を増強することにつながります。

「お薬は病を治し、お菓子は心を癒す」を信条に、薬剤師と製菓修業の両立を目指してきた私ですが、気付けば、その2つのベクトルは自然な合力となり、フランス伝統の植物療法を礎にした「健康美のための美味しいのみもの」を生み出すようになっていました。ここにまとめたものはその一部ですが、自然の営みに同調し、四季の移ろいを健やかに愉しむ為に大地がもたらしてくれる、私たちに必要な有効成分(肉体の栄養)と美味しさ(心の栄養)を共存させ、人間本来が備えている自然治癒力を高めるような処方となっています。
お薬やサプリメントを取り入れるようなご自身に対する真摯な気持ちと、安全で美味しいものを手作りする悦びの両方を満たすための、この欲張りなレシピを美の都から、白衣にエプロンを重ねて発信したいと思います。

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春 すべてが新しくなる春には、まず体内浄化を目指しましょう。冬季の運動不足で老廃物が増え、消化器官の働きも低下しがちです。利尿を促せば、体液、組織もきれいになるので、美肌やアレルギー予防にも役立ちます。それに加えて、トニック(強壮)効果のある薬草を取り入れることで朝の目覚めや環境変化に伴う、メンタルな問題も美味しく解決してゆきましょう。
気温、湿度の上昇に伴って、発汗と利尿が高まり、体力消耗の激しい季節には清涼感のあるのみもので十分なビタミン・ミネラルを摂りながら活力を取り戻しましょう。また、夏の紫外線による内外のダメージに強くなるため、抗酸化作用のある薬用植物を意識的にとりいれることも大切です。また、冷房による冷えずぎ等、外気と室内の大きな温度差による体内調節をスムーズにするためにも、植物の力を借りましょう。
夏
秋 厳しい残暑が過ぎる頃には、夏に受けた肌ストレスを回復し、内側から肌の潤いを取り戻して冬に備えましょう。また、秋の日照時間の短縮や気温の低下などの物理的変化が誘う、何となく哀しいメランコリックな気分は、不安や不眠、自律神経系トラブルにつながることもあります。そのような状況を認識し、安全でやさしい方法として薬草成分を活用しながら、この時季を乗り越えましょう。
寒さが進み、急に空気が乾燥するこの季節は、血液循環が滞り、頭痛、肩こり、神経痛などの症状を呈したり、鼻やのどの粘膜の抵抗力の低下や、皮膚の乾燥によって細菌やウイルスに侵されやすくなります。身体の保温と保湿を促すことを第一目的としながら、免疫を高める処方で気力体力を充実させましょう。
冬

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